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Teatime

季節はすっかり夏!日本って強烈に寒かったり暑かったりで、本当にヘビーな所だわ...と思う今日この頃。
前回のコラムに続き、今回もアガサ・クリスティ作品に詳しく描かれている、一昔前のイギリス上流階級の暮らしぶりについてお話したいと思います。

Episodo.24 イギリスお嬢様事情と上流階級風プロポーズの方法!?

4月、5月の二ヶ月間に渡り、スカパー・ミステリーチャンネルにて、アガサ・クリスティドラマ特集を思う存分楽しませて頂きました。
ポアロが出てくる短編ドラマはNHKでも放送されていたので、ご覧になった方も多いと思いますが、ミステリーチャンネルでは、なかなかお目にかかれないような隠れた名作の2時間ドラマや映画を毎日毎日放送してくれましたので、アガサファンの私には「感無量」の一言でした。

どれも観たくてたまらない作品ばかりでしたが、特に面白かった物は、

「忘られぬ死」(83米)
「殺人は容易だ」(82米)
「七つのダイヤル」(80年代英)
「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」(80年代英)
「秘密機関」(80年代英)
「邪悪の家」(別名「エンドハウスの怪事件」80年代英)
「もの言えぬ証人」(80年代英)

でした。

前回のコラムでふれた「茶色の服の男」も観ることが出来たのですが、ヒロインがイメージと全く違っていたので少しがっくりでした...原作では、ヒロインは20代前半の可憐なイギリスのお嬢さんというイメージのはずなのに、ドラマではラテン系の少し年食ったギャル!ヒロインが恋するワイルドな美青年は、松田優作さんを白人にした感じのニヒルな俳優さんが演じていました。(限りなく無口で渋かった〜☆)
俳優さんには大満足でしたが、やはりクリスティの映画やドラマはイギリスものが一番だわ〜と思った私です。

さて、イギリスにおける上流階級(アッパークラス)に属する人々は、今も昔も言うまでもなく大金持ちです。
お金持ちのレベルは様々ですが、大方がとてつもない程の土地や家、マンションなどの不動産を所有しているので、あくせく働かなくても、懐にお金がたくさん入り込んできます。

彼らはイギリスの田舎に広大な屋敷を所有し、たくさんの召使い、家政婦、執事、庭師、子供がいる場合は、乳母、家庭教師を抱えて優雅に生活します。門から屋敷までにたどりつくのに半時間以上かかりそうなお屋敷も珍しくなく、敷地内に森や川や池、運河がある場合もあります。(屋敷というよりお城ですね!) お屋敷周辺には、入念に手入れされた庭園があり、ゴルフの出来る芝生があったり、テニスコートがあったりして、見ているだけでため息が出ます。

クリスティのドラマでも、登場人物は仕事などしないで、パーティーに明け暮れたり、ボートやヨットでクルーズを楽しんだり、乗馬を楽しんだり、ゴルフやテニスに励む姿が描かれています。テニスのシーンには、以前紹介した爽やかなカクテルも登場しました。

上流階級の家に生まれた子供達は、庶民とは異なった名門校で勉学に励み、庶民の子供達と遊ぶ事もほとんどないそうです。卒業後は家業を継いだり、事業を起こしたり、ふらりと外国へ移住して外国で成功したりしますが、幼少より、いずれ人の上に立つ立派な指導者になるようにと、厳しく教育されるそうです。
そして、話し言葉も庶民とは全く異なった独特の物で、「〜かもしれません。」「その可能性もありますね。」...と物事を遠回しに話し、決して断定しないというのが基本だそうです。
また、何があっても決して諦めないという不屈の精神力、少々の事には驚かないという図太い神経も必要とされるそうです。(全てうちの夫に当てはまるのはどういう事かしらん?)

年頃になると、社交界にデビューし、月に何度かはロンドンでのパーティーに顔を出すというのがお決まりだそうです。ですから、大方が、いなかに大邸宅を持ち、ロンドンにはフラット(マンション)や小さな屋敷を所有している事が多いそうです。
そういう別宅にも執事や召使いが住んでいて、いつ泊まりに行ってもいいように管理していますので、なんて贅沢なんだろう...とため息が出てしまいますが、今ではどんなお金持ちでも、召使いを一昔前のようにたくさん置くことはしていないそうです。お金がかかってしょうがないからというのがその理由です。
今では、上流階級出身のご子息やご令嬢も、たいがいが仕事に就き、まじめに働いているそうです。それに、不動産なども売り払ったりして、昔ほどの華やかさはないようです。


クリスティの作品には、上流階級のお嬢様方がたくさん登場しますが、中でも一番位が高かったのは、「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」の伯爵令嬢、レディ・フランシスではないでしょうか?
この作品は、長年の私の大のお気に入りで、イギリス留学時に一緒に渡英した程の作品ですので、ぜひ紹介したいと思います。

この作品はクリスティの15作目の長篇物で、1934年に出版されました。同じ年にあの不朽の名作「オリエント急行殺人事件」も発表しているので驚きましたが、クリスティが夢中で執筆している姿が目に浮かぶような若さあふれるスリラーです。

ところで、「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」というとてつもなく長くて意味深なタイトルを見て、読み出す前に思わず吹き出しまうのは、私だけじゃないはず。
エヴァンズというのは、イギリスではとってもよくある苗字で、日本の鈴木さんや山本さんといった感じです。魔女風に訳すと「なぜ鈴木さんに頼まなかったのか?」かしらん...。

物語は、このエヴァンズが一体誰なのか?というのが、犯人探しのキーワードになっています。主人公で牧師館の四男坊ボビーは、ゴルフの最中に、崖下で瀕死の男を発見します。そして、その男は「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」と言って、息をひきとります。
男の死は転落死と断定されましたが、数日後ボビーがモルヒネを盛られた事により、ボビーは無謀にも、幼なじみの伯爵令嬢レディ・フランシスと共に、事件解明の旅へと出ます。

さて、この作品のヒロイン、レディ・フランシスの口癖は「毎日退屈ね...何かおもしろい事はないかしら...」です。

最先端のドレスに身を包み(もちろんオートクチュールで、帽子と手袋もお揃いになっている!)夜な夜な超高級ナイトクラブをはしごしたり、オープンカーをぶっ飛ばすというお転婆です。

このレディ・フランシス役は、オードリー・ヘップバーンが勇ましくなったようなイギリス人女優が演じていました。
相手役の、牧師館の四男坊・ボビーは、ジャッキー・チェーンがイギリス人になったような(?)人好きのする、イギリスの俳優さんが演じていました。このお二人は、クリスティものにたくさん出演していて、イギリスではとっても有名なコンビだそうです。

物語の始まりで、ボビーは、何者かにモルヒネ(猛毒)を盛られ、九死に一生を得るわけですが、病室にお見舞いにやって来たレディ・フランシスは、青い顔で横たわるボビーに向かって、
「モルヒネを盛られるなんて素敵ね!なんてロマンチックなの〜!」と、とっても羨ましそうに言います。
ボビーの「ひどいな、それはないだろう!」という会話に思わず吹き出してしまった私ですが、お嬢様の生活は、退屈との戦いのような物で、お嬢様なりに大変なのかもしれませんね...。

また、数々のクリスティのドラマや映画から、イギリス上流階級風(?)愛の告白やプロポーズのシーンを拝見する事も出来ました・・・

が、どれもあきれるほど遠回しで、鈍感な私なら、聞き流してしまいそうな感じのものばかり...。
ドラマや映画のエンディングで男性が、意中のヒロインを見詰めながら、
「あの...だからその...わかってくれるだろう?」と言うと、
「え?そうねぇ...まっいいわ、そうしましょう!」
「本当かい?本当にいいのかい?」
「ええ。」
...一体何がいいんだか、途中から観た人には絶対にプロポーズしている風には見えないぞ〜!!!と、かなり欲求不満が残るような感じですが、お上品な方々に限らず、イギリス人男性の大方は、このような感じでプロポーズする、とある本で読んだことがあります。

この後二人は、ヒロインの父親(もちろんとってもお偉い方)に挨拶に行き、男性は「娘さんを頂いてもよろしいでしょうか?!」と、とてもぶしつけに訊くわけです。そして、父親も父親で、「よかろう、娘をもらってくれるのか?持っていきなさい!...で、君の名は?」と、とってもいい加減!

少し極端かもしれませんが、イギリスの親達はこの父親のように、子供の結婚相手にはさほど興味がないし、子供の結婚に口をはさむ事は少ないそうです。イギリスの親は、子供が18才になると成人として扱いますし、18才になると、ほとんどが独立して家を出ます。だから、親子と言えども、こんな風に割り切った関係になるんでしょうね。

うちの場合も、夫の両親は結婚当初、私にはあまり興味がなかったような感じです。ただ、恐らく彼らにとって、私は初めて親しくなった東洋人(!)でしたので、私の存在自体が宇宙人の様な感じだったと思います。
なぜ典型的なイギリス人である自分たちの息子が、遙かかなたにある日本という国の黒髪の生命体と、結婚するのかを理解するのに時間がかかりました。

そして両親と初対面した時に、両親がスネイプ(うちの夫)に、「彼女とはどうやって会話するの?話はできるの?会話は成り立つの?」とひそひそと話していた事もあります。
今から思うと、「宇宙人と交信できるの?」といった感じですよね。
私の両親も夫の写真を見せると血管が破裂しそうな程怒り、
「なんでわざわざイギリス人と結婚する必要があるのだ!!!」と言い続けていましたから、どこの国でも「国際結婚」というのは、お家の大事件?みたいなものかもしれません。

ところが、娘が生まれてからは、どちらの両親もてんやわんやの大騒ぎで、夫の両親は、はるばるイギリスから苦手な飛行機に乗って、孫の顔を見にやって来ましたから、子供の力って偉大だな〜と思いました(^^)。
孫が生まれると、国籍の違いなんてどうでもよくなってしまうのですね。

なぜエヴァンスに頼まなかったのか?
ミステリーコンビとして有名な、フランセシカ・アニスとジェームス・ワーウィック。